オンラインで修士号を取得した人のブログ How I got MPH

仕事をしながら修士号を取得したことをまとめたブログです。2015年8月にUniversity of Liverpool Master of Public Health course に合格。2018年12月に卒業。

How I Work 私のオンライン留学〜LSHTM: The London School of Hygiene & Tropical Medicine〜

こんにちは、小迫です。

過去に2度、私自身のオンライン留学の勉強環境を紹介したHow I Workシリーズ。

前回は、途上国で働く助産師さん( 途上国で働く助産師 (@improve_MCH) | Twitter )に途上国で働きながら勉強している環境をご寄稿いただきました。

 

今回は、第4弾!

もうすぐMPHさん ( moumph (@mousugumph) | Twitter )に、LSHTM: The London School of Hygiene & Tropical Medicine でのオンライン留学の様子と勉強環境をご寄稿いただきました。

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はじめに

自分がMPHにアプライした当時はオンライン修士を履修している方のブログはほとんどなく、通学MPHの方のブログを参考にしていました。自分自身も情報収集に苦労したため、この情報がどなたかの役に立てば幸いです。

 

現在までの経緯

もともとグローバルヘルスに興味があり、人々の健康に大きなインパクトを与えるような仕事をしたいという理由で就職しましたが、大学院で学び直すことで公衆衛生について広い見識を得たいという気持ちがありました。進学先にLSHTM(The London School of Hygiene & Tropical Medicine)を選んだ理由は、LSHTMが所属するUniversity of Londonにはdistance learningの長い歴史があることと、LSHTMの公衆衛生分野での圧倒的な存在感です。

  

勉強方法

LSHTMのシラバスは公開されているとおり( https://london.ac.uk/courses/public-health#modules )ですが、Core Module 6科目は6月に全世界同時日程で行われる各国テストセンター(日本は東京、大阪、長崎)でのテストのみで成績が決まり、Elective moduleについては、3月末締め切りのAssessed Assignmentと呼ばれる2500-3000word程度の課題があります。「Assessed Assignment:6月のテストの結果=3:7」で評価されます。(ただ、これについてはテストを受けるタイミングや、Assignmentを増やす等、現在改訂が協議されているようなので、今後変更があるかもしれません)

その他、インタラクティブなオンライン授業や、決まったTopicでのDiscussionなどがありますが、いずれも自由参加で成績には反映されません。質問やdiscussionは自由にForumに投稿でき、tutorが数日以内に回答をしてくれます。また、時間とお金が許せば、elective moduleについては上限二科目までOn-campusで通学生と一緒に履修することもできます。

とても自由度が高く、勉強の進め方は学生の自主性に任されていますが、勉強すべき内容は多く、しっかりと計画を立てないと、いつのまにかテストが迫っているということになりかねません。。私は、年内に教科書と文献を読んでまとめ、1-3月に課題、4-6月exam準備というスケジュールで勉強していました。だいたい1年に3科目修了するようなペースで進めていきました。

 

履修期間は最大5年(追加料金でextension可)ですが、この5年間、自分の時間というものはほとんどなく、通勤時間、休日、平日の深夜・早朝をなるべく勉強時間に充てていました。妊娠中は体調不良もあり、子供が産まれた後も勉強時間を確保するのが難しかったり、自分や家族が突然体調を崩したりなど、予定通りに勉強を進めることができない時も多かったです。

勉強をする環境については、平日は通勤時間中や深夜に家で勉強していましたが、休日は子供たちを夫に託して、近くの大学の図書館(有料)を利用したり、スタバ等のカフェで勉強したりしていました。大学の図書館はネットが使え、日本語で書かれた(←重要)学術書や統計ソフトの解説書などを借りることができたため、自習に大変役立ちました。敷地内にカフェや売店もあり、勉強には申し分のない環境でした。

  

勉強の仕方

大学時代の研究や仕事と履修科目には共通点も多く、大学や仕事で英語の文献や書類を読むことは多かったのですが、これまでの教育はすべて日本で受けてきた自分にとって、外国語で学ぶことはとてもチャレンジングでした。自分の頭の中で深い思考をするときに使用する言語は日本語であるため、大学の授業を理解するには、英語で教科書を読み、頭の中で日本語に直して理解し、英語でアウトプットするという段階を踏まないと内容を自分のものとすることはできませんでした。

テストや課題は長文記述式のため、単にTheoryやフレームワークの知識を問う問題だけではなく、理論を用いて実際のCaseを分析したり、自分が公衆衛生担当者として国や地域の保健施策を考えたりといった課題が多かったです。そのため深い理解(批判的吟味)や独創的なアイデアが求められていました。

大学のページに紹介されていたのですが、教科書を、ただラインを引きながら読むだけではなく、余白にメモを書き込みながら読むのが良いとあったので、そのようにしていました。

英語でのアウトプットに関しては、各単元2頁くらいにまとめたノートを作るとともに、小さいノートに教科書で出てきた単語を書き溜め、自分専用の単語帳のようにしていました。

また、6月の一斉テストはボールペンと計算機と水のみ持ち込み可で、2時間15分回答冊子に書き続けるという過酷なテストですが、自分は普段はパソコン入力が主で字書くのはメモ程度であったため、長文を書くことに慣れるためにテスト勉強は基本的に紙に書いて覚えるスタイルにしました。

 

多くの科目で,教科書はOpen university pressのUnderstanding public healthシリーズで、LSHTMの教員によりPublic HealthのF2F及びDistance learner用に作られたものであり、基本的に読みながら自習で進めていけるような内容になっています。

また教科書以外にWork bookやパソコンで学習するinteractiveなmaterialなど、自習するための資料はとても豊富です。学生がアクセスするHPには、文献リスト、スライド、FAQ等の各種Learning MaterialだけでなくOn-Campusの授業の録画、Discussion forum等があり、自由に利用することができました。

科目によってtutorのサポート度合に若干差がありますが、総じてサポーティブでした。テスト前には学生が一斉に質問を書き込み、tutorが回答をしてくれるので、教科書を開く気力がないときは、スマホでそれを眺めてrevisionをしていました。

 

facebookには公式の学生コミュニティがあるので、過去問や選択科目の情報をやりとりしたり、悩みを相談し合ったりしました。家庭や仕事があるためDLを選ぶという人が多いようで、皆悩むことは似ており、お互いに励まし合いながら各々のペースで勉強を進めていました。

 

私の履修したコースは、project(修士論文)をやらずに学科のみ(projectの代わりに三科目elective moduleを追加履修)でも卒業できますが、私はprojectを選択しました。各々に1人supervisorがアサインされ、丸一年をかけて、proposal作成、倫理委員会提出、method提出、フルレポートのドラフト提出、ファイナル版の提出と進めていきます。通常科目の履修では先生たちや他の学生との関わりが少ない中、projectでは先生と1:1で深いディスカッションをすることができ、貴重な経験でした。

 

タイムマネジメント

オンライン修士を履修していらっしゃる方の悩みの多くはタイムマネジメントかとおもいます。仕事や家庭のコミットメントと、勉強時間をどうやりくりするか…はやはり大きなチャレンジで、個々人の状況に応じて対応は変わってくると思います。

私が意識していたことは以下の3つです。

1.隙間時間の活用:

通勤時間はあえて必ず座れる普通電車にのり、教科書を読む/授業録画を見る時間に充てました。常に教科書をバッグの中にいれて、いつでも勉強できるようにしておきました。気力がなくても、眺めるだけでも少しずつ進めることができます。

2.ながら時間にはブレスト:

料理中、洗濯干し中、授乳中などの時間は、projectやAssignmentの構想を練ったり、教科書の内容を思い出したりしていました。枕上馬上厠上…とはよく言ったもので、良いアイデアはこのようなときに思いつくことが多かったです。 

3.じっくり考える時間を作る:

細切れ時間を利用して何とか勉強時間の総量を増やせても、やはり勉強以外全てをシャットアウトして集中する時間は必要と思います。特に課題やproject等では必須でした。そのため週末は図書館に行くなどして意識的に勉強のみに集中する時間をつくりました。

一方、休日の昼間は子供の行事や家族での外出、自分のプライベートの予定がある日もあり、そのような日は勉強のことは一旦忘れてそのイベントを楽しむようにしました。

 

充電時間

とはいえ、このような張り詰めた生活を何年も続けていると、精神がすり減って仕事にも家庭にも悪影響なので、課題やテスト等のマイルストンを達成したら、適度に休みを取って気分転換していました。全く勉強しない週ももちろんありましたし、長期休暇は旅行にも行きました。

 

おわりに

自分の人生における希望を全て叶えるには、妊娠出産を挟んでこのタイミングで履修するしかなかったと思いますが、やはり家族(特に配偶者)の負担は大きく、育児・仕事と勉強の同時並行は万人にはおすすめはできません…

しかし、自分の中での確実に視野は広がり、また、MPH履修をきっかけに、グローバルヘルス関連のプロジェクトにも少しずつ関われるようになりました。

最初は無理かと思われた5年計画でしたが、あきらめず少しずつでも進めていくことができれば、きっとゴールにたどり着けると思います。

この情報が少しでも皆さんのお役にたちますように…

 

参考になった本・サイト:

英国の大学に学ぶ 林正文著(英国の大学院で学生に求められていることがクリアに書かれており、「学ぶ方法」について明確に解説してあります。これまで日本の教育制度で教育を受けてきた方にとっては、英国大学院の教育とのギャップがかなり大きいため、Master開始時に読むと、今後の学習効率がかなり良くなると思います。)

Note Taking:

https://resources.library.leeds.ac.uk/note-taking/

Dr.浦島充佳公式HP(日本語で書かれた疫学の解説、stataコマンドあり)

http://dr-urashima.jp/g-kiji.html

 

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いかがでしたか、もうすぐMPHさんのオンライン留学。

「過酷だ・・・」というのが、私の感想です。

LSHTMはテスト中心のオンラインコースなのは有名です。私が通ってたUnivesity of Liverpoolは、テストが一切なくすべてAssignment でした。

得意不得意があると思うので、自分が応募しようとしている大学院が、テスト中心かAssignment中心かはしっかり調べたほうがいいですね(たいてい、願書の問い合わせなどで訊けば教えてくれると思います)。

 

ちなみに、もうすぐMPHさんは、すでに修論を出し終え、修士取得資格もゲットされた模様!

おめでとうございます!

さて、さらに詳しい話を聞きたい場合は「TwitterのDMを通してご連絡下さい」とのことです。

 

お知らせ

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夢に向かって頑張りましょう!ちゃお!